プロの建築家になるために学生のうちに最低限知っておくべきこと

みなさんは建築を学んで将来どんなことをしたいと思っていますか?私は家を建ててそこに住んでもらうことで、より快適に、幸せになるような空間をつくりたいと考えています。そのような家を建てるにはやはりその分野について深く学ぶ必要があります。今回は学生のうちに学んでおきたいことをまとめてみました。

 

 

学生のうちに学んでいきたいこと


 

「建築」を学校で学ぶことの意味


 

高等教育機関で建築を学ぶということは建築を学問として学ぶことです。学問としての建築は「建築学」とよばれています。学問とは体系化された「知」であるとしたらその全体像はどこで見ることが出来るのでしょうか?建築のプロを目指すのであれば、建築化された全体像に触れておきたいところです。

ところがこの知の体系自体が、常に変革されていくために手に入れにくくなっています。

現時点でこの欲求をみたし、そしてうれしいことに建築的にそれを体験できる場所が図書館です。図書館には知が凝縮された書物が、収蔵され、分類され、体系化されています。この知の体系の中で建築家がどのように分類され、位置づけられているかを見て、さらに空間的に体験するに図書館へ出かけてみましょう。

図書館の総本山ともいえる国立国会図書館の分類表の中で、建築学が置かれている位置を見てみると、建築関連の書籍は、芸術学の分野と工学の分野に分類されています。つまり、この2つの分野にまたがって位置づけられていることがわかります。建築デザインのプロになるためにはため芸術的知識体系と工学的知識体系とを学んでいく必要があることがなんとなくだがつかめるでしょう。

また、知の体系の中での建築学の全体像は、ウェブの中での分類でも見ることができます。さっそくamazonにアクセスしてみましょう。

和書のジャンルを見てみると建築関連の書籍は、「科学・テクノロジー→工学→建築・土木工学」として、工学的な分野として取りまとめられているものとより大きな項目として「アート・建築・デザイン→建築」とまとめられているものと、こちらでも大きく2つの分野にまたがって分類されていることがわかります。

 

 

学校で学ぶ建築デザイン


 

すべての学校が一律に同じ教育を行うことなんてできません。ましてや建築デザインは実務なので、建築学や建築教育の体系があっても、固定的に位置づけること自体が難しいのです。また、日本では工学部の中に建築系の教育機関が設置されてきたという歴史的な背景もあり、建築デザインの教育は千差万別な状況となっています。

日本の建築教育は、諸外国に比べて芸術的な側面が弱いといわれてきました。日本では多くの建築学科が工学部の中に設けられているのに対し、諸外国では美術学部の中に設けられているケースが多いのです。構造や設備といった工学的側面を併せ持った環境で建築デザイン教育が行われている日本の現状はこれまで悪く言われがちでした。

でも、うまくその特徴を活かせば、世界に類がない大きなメリットに転換できる可能性があります。むしろ、日本の教育機関に入学した以上は、デザイナー志望であっても、工学的アプローチをしっかりと身に付けた方がよいでしょう。それが、日本で教育を受けた建築家として、世界で求められる「個性」の土台となるでしょう。

 

 

いろいろある建築デザインの仕事


 

みなさんは大学や専門学校で勉強した後、どういった仕事に携わりたいか考えていますか?実務の世界に入って建築デザインを手掛けながらも、通常は「建築家」とは呼ばれていない仕事に就く人々も非常に多いのです。それではプロの建築家としての仕事を見てみましょう。

 

アトリエ事務所

建築家のイメージにもっとも近いのは、いわゆる「アトリエ事務所」と呼ばれている、比較的少人数で建築デザイン(意匠設計)に特化した事務所の所長でしょう。有名建築雑誌に登場する建築家のほとんどは、こうした事務所の所長です。よって、建築家を目指す人々のメインの就職先はアトリエ事務所ということになります。今や有名建築家となった人も、若いころはアトリエ工事務所で修行している場合が多いのです。

アトリエにより、手掛ける仕事の種類はいろいろあります。小型のアトリエでは個人住宅が多く、有名アトリエでは、大型の集合住宅やオフィスビルなども手掛けるのが一般的な傾向です。超有名アトリエでは、海外の仕事が大半を占めることもあります。

意匠設計のアトリエ事務所があるのと同様に、構造設計や設備設計でもアトリエスタイルの事務所があります。また、現代の建築は一人で設計することは難しくなっているので、通常は、意匠設計、構造設計、設備設計のアトリエがチームを組んで仕事を行います。

よって、「建築家」とは、意匠系のアトリエ事務所の所長やチーフ格の社員をさすことが一般的です。ただし、最近では構造設計の事務所の所長や社員が自らを「構造家」や「構造デザイナー」と呼ばれることも多いのです。

アトリエに就職する人々の究極の目標が、独立して自らのアトリエを開設することであるため、アトリエにおいて人材は流動的であるといえます。日本の会社で特徴的な「終身雇用制」とはかなり異なった文化をもっていますが、アトリエ事務所の世界だと考えられます。

 

組織設計事務所

一方で、「組織設計事務所」と呼ばれるものもあります。アトリエに比べて会社の規模が大きく、基本的にチームで設計します。意匠設計者だけでなく、内部に構造設計者や設備設計者など建築デザインをサポートする広範なエンジニアを抱えている場合が多いのです。

一般には、不動産業者や大手の企業から依頼されたオフィスビル複合機能施設、大型のマンションなど中規模から大規模の建築物を手掛けることが多い傾向があります。逆に、個人住宅などを設計することは極めて稀なことです。つまり、アトリエ事務所と組織設計事務所では、手掛ける建築タイプも異なることが多いということです。

有名アトリエと同様に、種々のの建築タイプに取り組む有名事務所への入社希望者は多く、狭き門となっています。

一方、独立して自らのアトリエ事務所を開設する人は少数で、多くは終身雇用となっています。かつては中途採用者が少なかったが、近年では、アトリエ系からの転職組も多く、人材が多様化、流動しつつあるようです。

 

ゼネコン設計部

3つ目は、ゼネコンの設計部で働くタイプです。組織設計事務所と同じく、比較的規模が大きくチームで設計するため、組織設計事務所と一見よく似ています。

決定的な違いは、組織設計事務所が、内部に施工(建物を実際につくる)部門を持たないのに対して、ゼネコンの設計部は、本体が施工会社であるということです。

設計のみを担当するケースが少なく、通常は工事も一緒に行うので、仕事のスタイルを「設計施工一貫」などと呼ぶこともあります。施工会社と一体であることが強みでもあり弱みでもあります。組織設計事務所と同様に、デザインをまとめるチーフ格の社員は、自らを建築家となのるケースは多いのです。

手掛ける建築タイプは極めて多いのですが、施工主により建設コストが大きく左右される郊外型ショッピングセンターや集合住宅などの分野において強みをもっています。

組織設計事務所に増して、大手ゼネコンの設計部への就職は競争が激しくなっていて、狭き門だといえます。

 

その他のプロの建築家としての仕事

設計事務所やゼネコンの設計部での仕事以外にも、プロの建築家としての職場は多方面に開けています。まず、インテリア設計事務所など、建築のある部分のみをデザインする事務所に就職するケースです。事務所によって、集合住宅のインテリア、店舗の内装など得意不得意が分かれることが多いのです。類似したケースとしては、サインやディスプレイ業界もあります。

不動産業界や銀行でも、大型のプロジェクトをマネージメントする機会が多く、クライアントの立場から建築デザインに参画するプロを求めているケースも多くあります。

ハウジングメーカーも、建築のプロを多く抱えている業種です。一般的な住宅と異なり、部材から生産までも睨んで商品的に住宅を開発する、他の分野の建築デザインとは一味違った仕事が経験できます。

 


 

以上でおしまいです。おつかれさまでした!

どんな職業に就きたいかは焦らずに、じっくりと考えてから選びましょう!

このブログは以下の本を参考文献として使わせていただきました!

 

「20代で身に付けたいプロ建築家になる勉強法」 著者 山梨知彦