建築生は必読 博物館・美術館のしくみ
今回は博物館や美術館がどのようになっているかを紹介します。
「見る」「知る」博物館・美術館
博物館・美術館
来館者が所蔵コレクションや美術品を鑑賞し、その歴史や芸術性を知るなどの文化的活動が行われる場です。
カフェで憩い、ミュージアムショップで買い物を楽しむといった余暇を楽しく過ごす場所でもあります。
活動に対応した場
接近・入館する
アプローチは建築へのはじめての出会いの空間です
アプローチ形態はエントランスを含む施設配置全体の構成や外観デザインに大きな影響を及ぼします。
観る -展示室・ギャラリーー
来場者が所蔵コレクションを鑑賞する最も重要な場となります。
展示環境の設定は展示物の貴重性や材質により異なります。
照明は展示室の全体照明と展示物への局所照明を別系統でコントロールしています。
また、現代アートなどであえて自然光を取り入れているものもあります。
規模は展示室の特質や大きさや展示量などにより決定されます。
集まる -ホール・セミナー室ー
各種講演会や展示企画にちなんだ上映会などが催される場です。
展示部門から独立して利用できるようエントランスホールから直接入れる配置が望ましいとされています。
ホールは階段状の固定座席の形式のほか、座席や舞台配置に柔軟性のある平土間形式などがあります。
調べる・閲覧する -ライブラリ・AVコーナーー
ライブラリ・AVコーナーの利用する際にする手続きや貸出などの際には職員とコンタクトする必要があります。
管理・案内機能と関連するエントランス付近に配置されるのが望ましいとされています。
憩う・楽しむ -カフェ・ミュージアムショップー
来館者や長時間滞在者に憩いやゆとりを与える空間です。
また、カフェやミュージアムショップは外部からの直接アクセスや閉館時の単独利用、外部テラスの併設などに配慮します。
調査・研究する -学芸員室・研究室ー
学芸員や研究室の活動が行われる場所で資料室、写真室などが近接配置されます。
非公開部門(ウラ)で一般利用の動線とは交わらないが、収蔵庫や展示に関連する諸室へのつながりに配慮する必要がある。
収蔵する -収蔵庫・荷解室・燻製室などー
収蔵コレクションの保存管理は非常に重要な機能です。
収蔵庫には防火性や恒温・恒湿の厳しい空調管理が求められ、そのための建築的工夫が施されています。
荷解室はバックヤードから搬入された収集品の荷解きを行う場所で、燻製室は持ち込まれた収集品のカビやダニを駆除する場所です。
荷解室は直接バックヤードとつながるよう、また燻製室は荷解室と収蔵庫の間に配置されます。
場と空間の組み立て方
企画と展示
展示の主な目的が常設展示か企画展示かで、配置計画や展示室の性能は大きく異なります。
常設展示は収蔵コレクションを長期にわたり展示するので、その特質(大きさ・素材・見せ方)にあわせた展示計画が必要となります。
企画展示はテーマにあわせた短期間の展示や巡回展のことで、一般展示は地域交流を目的とした団体の成果発表のようなものです。
企画展示室や一般展示のギャラリーは展示に対する融通性が求められます。
敷地や周辺環境の特性
全体計画を進めていく上で、敷地条件や周辺環境の特性を十分読み取ることが重要となります。
また、郊外の広い敷地、周辺に豊かな自然や伝統的建築があるなどは軸線の設定や配置の形態、外観イメージを決定する重要な要素となります。
アプローチや駐車場、バックヤードの機能的配置も敷地環境から決定されます。
部門と諸室
利用者に対しては導入(アプローチ・エントランスロビーなど)、展示(展示室・ギャラリーなど)、教育・普及(ホール・セミナー室・ライブラリなど)の部門があります。
職員に対しては調査・研究(学芸員室・研究室など)、収蔵(収蔵庫、荷解き室、燻製室など)の部門があります。
利用者のための部門と職員のための部門は公開部門(オモテ)と非公開部門(ウラ)という関係になります。
エントランスにおける案内・受付による職員と来館者のコンタクト、あるいは収蔵・研究・展示といった学芸員の活動があり、これらは部門間をつないでの行動となります。
展示室の配置計画
一般的に展示室の動線は一筆書きのような動線計画が望ましいとされています。
展示条件などにあわせて接室型、ホール型、廊下型などの配置計画がとられています。
ホール型:中央ホールは滞留空間や展示スペースを設けることができる
廊下型:廊下が中庭を囲むなどの配置が可能で増築に対応しやすい
建築類型への適応(建築の広がりや現代への対応)
博物館はmuseumと呼ばれ、この中で特に美術品を所蔵した施設は美術館art museumと呼ばれます。
現代の美術館は独立行政法人から県・町立・個人・企業所属のコレクション公開まで規模や内容はさまざまです。
博物館・美術館には各時代の建築デザイン界に衝撃を与え、その後の建築デザインの潮流をつくりだす契機となった記念碑的建築が数多くあります。
以上でおしまいです。おつかれさまでした!
私のおすすめの美術館は国立西洋美術館です。ル・コルビュジエが設計していてとても素晴らしい建築物なのでぜひ一度、行ってみてはいかがでしょうか。