室内空間の空調デザイン

今回は建築においての設備についてお話します。

設備は人間が快適に過ごすうえで大切な要素です。真冬に暖房器具が備わっていないとか考えられませんよね、、

 

室内空間の空調デザイン


 

 

人体生理と体感温度


まずは体温調節とエネルギー代謝についてお話します。

人間は体内での産熱と体内への放熱の収支がバランスすることによって、一定の体温を保ち、正常な生命活動を維持することができます。

人体の細胞は血液やリンパ液から必要な酵素や栄養を受け取り、代謝をおこなって老廃物を運び出すことにより生きており、体内の環境変化に関わらず、こうした生体恒常性を保とうとする生理反応が働きます。

寒ければふるえによって気化熱という形で放熱を増大させるなどの反応です。

また、寒さ、暑さに対処するために衣服の着脱を行ったり、熱的シェルター機能を期待して家を建てるなどの行為は、行動性体温調節と呼ばれます。

摂取した食物がエネルギー源となって、人間は活動と産熱が可能となります。

人間の産熱量を皮膚の単位面積当たりで表し、これをエネルギー代謝量といいます。

椅座(椅子に腰掛けた状態)安静時のエネルギー代謝量は58W/㎡です。

作業の強弱を表現するときには、エネルギー代謝率(Met)が使用されることが多く、式は以下のようにあらわされます。

 

Met=任意の作業時のエネルギー代謝量/椅座安静時のエネルギー代謝

 

上の表は作業程度による人体放熱量を顕熱と潜熱に分けて示しています。

顕熱分は人体と環境との温度差により放熱される熱であり、潜熱分は汗の蒸発により放熱される熱です。

たとえば、エネルギー代謝率が1.0Metの椅座安静時には、20℃で顕熱放熱69W/h、潜熱放熱が21W/hとなっているのに対し、28℃では顕熱放熱が44W/hへと低下する一方、潜熱放射は46W/hにまで増加し、潜熱による放射量が顕熱を上回ります。

 

 

人体温冷感と温熱快適性の指標


人体の温冷感は、次の6つの要素によって左右されます。

①温度

②湿度

③風速(室内では気流速度という)

④放射熱

⑤活動量

⑥着衣量

 

①~④は人体がおかれた環境としての要素であり、⑤、⑥は人体の要素です。

⑤の活動量はエネルギー代謝率Metで表現が可能です。

⑥の着衣量は衣服の熱抵抗を示す clo値で表される。

気温21℃、相対湿度50%、気流速度0.05m/s以下の室内で、人体からの放熱量が1Metのエネルギー代謝量と平衡し、温熱快適性を感じるときの衣服の熱抵抗0.155㎡/K・Wを1cloと定義されています。

背広姿では1clo程度、半そでシャツ姿で0.6clo程度です。

有効温度(ET, Effective Temperature)は、実行温度とも呼ばれ、1923年にヤグロ―とホートンによって提案されました。

任意の室内空気温度 θa、相対湿度Θ、気流速度 vの室があるとき、これと同じ温冷感となる相対湿度100%、気流速度0m/sの室の空気温度で表されます。

これら空気温度と快適範囲は、被害者実験を通じて定められました。

作用温度(OT, Operative Temperature)は、効果温度とも呼ばれ、1973年にウィンスロウらによって提案されました。これは以下の式で表されます。

 

OT=Aθa+Bθr

 

通常の暖房状態では、A=B=1/2として、式で作用温度を求める場合が多いです。

 

OT=θa+MRT/2

 

また、グローブ温度計を用いてMRT(平均放射温度)を求める場合には以下の式で表されます。

 

MRT=θg+2.35√v(θg-θai)

θg:グローブ温度 v:気流速度 θai:室内空気温度

 

 

以上でおしまいです。おつかれさまでした!

今回でてきた式はよく使われるのでかならず覚えましょう。